3年前、大阪の私立の進学校・清風高校で男子生徒が自殺をするという悲劇が起こりました。 (参照:ヤフーニュース│【カンニングは卑怯者】進学校で生徒が自殺「死ぬ恐怖よりも『卑怯者』と思われ生きることが怖い」遺書に記す「行き過ぎた指導で自殺」として遺族が約1億円の損害賠償求め提訴)
ニュースによると、高校では日ごろから「カンニングは卑怯者がすること」と指導されていて、 男子生徒のカンニングが発覚した後、数人の教師から4時間にわたり叱責を受け、1人の教員から「卑怯者である」と指摘を受けたのだそうです。 さらに、8日間の謹慎期間中に1巻につき約1時間かかる80巻分の写経を行う処分を課され、男子生徒はカンニングを行った2日後に自ら命を経ちました。
その後、男子生徒の両親はこうした行き過ぎた指導が自殺につながったとして、 学校側に対して、あわせて1億円あまりの損害賠償を求め、大阪地方裁判所に提訴しました。
カンニングは不適切な行為であり、それを行った以上は相応の対応が必要です。 しかし、今回の事件で行われた学校の対応は不適切であると私は思います。
まず、生徒が行ったカンニングという不正行為と学校の指導を切り離して考えるべきです。 生徒が不正行為を行ったのだから、学校がどのような対応をとったとしても、それは因果応報であり、自業自得であるということはあり得ません。
それでは、今回の報道にあるように、複数人の教員から4時間にわたって叱責を受けること、さらに卑怯者と罵られること、 また1巻につき1時間かかる写経を80巻分行うこと(8日で80時間分)を課されること、これらの指導は適切だったといえるのでしょうか?
個人的には「4時間も一体何を話すの?卑怯者と罵ったところで何の意味があるの? 80時間も写経を行って僧にでもなるの?」って感想しかないですね。 当然、教育的な意義を見いだすことはできませんし、生徒を追い詰める以外の効果は期待できないと思ってしまいます。
自分が学生だったときも思っていたのですが、学校教育は感情的になりすぎです。 もっと事務的に対応した方が良いと思います。 今回のカンニングについても、淡々と事務的な対応をしていれば、自殺には至らなかったのではないでしょうか。
理性的に考えれば、4時間の叱責が生産的でないこと、また無意味に生徒を罵ったり、罰を与えたりもしないでしょう。 写経は生徒自身が能動的に行わないとまったく意味がありません。罰則として強制するなど以ての外です。
大学共通テストでは不正が発覚した場合はマニュアルに沿って淡々と対応されます。 各高校でも不正行為については、事前に対応方法を吟味しておくべきです。 そうすれば、もう少し意味のある対応が取れていたはずです。
私も生徒たちに「カンニング」について言及することはあります。 ただ、「カンニングをするものは卑怯者である」といったアプローチはしません。
それよりも本来のテストが行われる目的について教えます。 私は元医療従事者ですから、医療に結びつけて話します。
学力テストは健康診断と同じであり、もしも不具合があったときに適切な対応をとるための指標になる。 不具合がある状態で放置していれば致命的な状況に陥る可能性があるから、テストの結果は必ず見せるようにと。 また、一夜漬けは、健康診断の一週間前から急にダイエットを始めたりするのと同じ行為で理に適わないし、 ましてやカンニングなんて、自分の血液を他人のとすり替えて提出するようなものだから、絶対に行わないようにと言います。
このように、テストの目的とカンニング行為の馬鹿らしさを説明すると、ほとんどの生徒は納得してくれます。
とはいえ、私の場合は1対1の指導であり、学校という多くの生徒たちに指導する場においては、一筋縄ではいかないのでしょう。
多くの生徒を抱える学校において、カンニング行為が行われることは想定できるでしょう。 カンニング行為が起きた以上はその原因を究明して再発防止に努めるべきでした。
なぜ男子生徒はカンニング行為を行ってしまったのか。これは学校だけでなく、家庭内の問題も影響しているのではないでしょうか。 それを学校と家庭とが連携して、カンニング行為に至った経緯を解明し、改善策を生徒本人、学校、家庭とで模索していれば、 今回のように命が失われることもなかったし、生徒の更生も望めたのではないでしょうか。
少なくとも生徒本人に対して「卑怯者」と罵り、精神的に追い詰めても何の改善も望めないのは明白です。
2024年4月10日更新
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